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予備知識 「卵巣欠落による更年期障害」 について *
★卵巣を摘出することがある病気……卵巣腫瘍(がん、境界悪性、良性)、子宮体がん、子宮頚がん、子宮内膜症、卵巣への癒着がある腹部のがんなど。「ホルモン治療」の対象疾患……乳がん※1、子宮体がん※2。
※1: 乳がんはエストロゲンの影響によって発生・増殖すると考えられ、生存率の向上のため、その働きを抑制するホルモン剤、タモキシフェン(製品名:ノルバデックス)が用いられることがあり、閉経を招きます。タモキシフィンによって、子宮体がんなどが増えるという研究報告があります。
※2: 子宮体がんはエストロゲンの影響によって発生・増殖すると考えられ、早期で妊娠を望む場合や、進行している場合、エストロゲンに拮抗する黄体ホルモン、プロゲステロンの大量投与が行なわれることがあります。副作用に、血栓症などがあります。
★更年期障害の主な症状……ほてり、発汗、食欲不振、倦怠感、しびれ、めまい、耳鳴り、不眠、イライラ、関節痛、骨粗しょう症、高脂血症、膣の萎縮、性交痛、失禁、乳房の萎縮痛、のどにひっかかる感じなど。
術後の反応や、化学療法、放射線療法の副作用、再発不安による反応、転移の自覚症状などとまぎらわしい症状もあります。
★ふたつある卵巣のうち、片側、あるいは1/4を残しても、女性(卵胞)ホルモン、エストロゲンは分泌されるため、更年期障害を防ぐことができます。ただし、残せるかどうかは、ケース・バイ・ケースです。
★放射線を腹部にかけると、卵巣機能が喪失する場合があります。それを回避するため、卵巣を放射線がかかりにくい位置に移す手術を行なう場合もあります。
★閉経年令の50代前後であれば、女性ホルモンの分泌が自然に低下していますが、若い年代のひとは急に分泌が無くなるため、より症状が強く出る傾向があります。
★「ホルモン補充療法」※3をするか否か−−子宮体がんや乳がんなど、エストロゲン依存性のがんにかかっている場合、ホルモンの補充が再発をうながす恐れがあります。また、乳がんにまだかかっていない人がこの療法を行なった場合、乳がんのリスクが高くなる、いや、むしろ低くなるなどと、対立する内容の研究結果が出ています。患者さんは、そのメリット(骨粗しょう症や動脈硬化の予防など)と、デメリットを十分に知った上で、選択しましょう。
※3: 更年期障害の治療法の一つとして、エストロゲンやプロゲステロンを補充します(エストロゲンだけを投与すると、子宮体がんの発生率が高くなることがわかり、それを防ぐために、子宮のある人にはプロゲステロンが併せて用いられるようになりました)。
★漢方療法が効く人もいます。