リンパ浮腫にとりくむ会 りんりん

第4回公開講演会

「リンパ浮腫の予防と治療」

子宮がんや卵巣がん、乳がん、前立腺がんの手術でリンパ節郭清をすると、リンパ浮腫になることがあります。慢性化するとなかなか治りにくく、日常生活に支障をきたしたり、細菌感染を起こしやすくなり、あなどれない合併症です。
発症する時期は、手術後まもなくという人から、中には10年、20年経ってからという人も。予防と早期の適切な対応が、とても大切です。そこで、リンパ浮腫の数少ない専門医、廣田彰男さんに、予防と治療についてお話しいただきます。
話し手

東京専売病院健康管理部長 廣田彰男(ひろた・あきお)さん

◆プロフィール◆
1947年5月15日札幌生まれ。
1972年北海道大学医学部卒。
同年、東邦大学医学部第三内科・関清教授に師事。
1981年東邦大学第三内科講師。
1991年東京専売病院健康管理部長兼循環器部長として着任。
1996年同健康管理部長兼検査科部長として現在に至る。
著書に『「リンパ浮腫」知って!』(芳賀書店、1999年)などがある。
日本リンパ学会理事、日本脈管学会評議員、日本静脈学会評議員、
日本内科学会認定医、日本循環器学会専門医。
専門:リンパ浮腫、浮腫、末梢循環、静脈疾患。

【廣田彰男さんからのメッセージ】
子宮がんや卵巣がん、乳がんなどの手術で、リンパ節かく清を行った場合、術後に脚や腕がむくんでくることがありますが、 多くの場合リンパ浮腫によるものです。 医療関係者の間でもあまり馴染みがないため、術前に注意を受けている方は少ないと思います。 残念ながら一旦むくみが生じると完全に治すことは困難なことが多いのですが、早期に注意さえしていればコントロールは比較的容易です。 リンパ浮腫の治療では病気を理解することがとても大切です。今回はリンパ浮腫の出き方(病態)と注意の仕方についてお話させて頂きます。

日時
2000年11月26日(日)13:30〜16:00
参加資格
一般公開の催しです。事前申し込みは必要ありません
場所
関東中央病院 講堂
東京都世田谷区上用賀6−25−1

【バス案内】
* 東急新玉川線用賀駅下車 美術館・関東中央病院行(1番)東京コーチバス約5分/成城学園前行き(6番)バス約10分
* 小田急成城学園前駅 渋谷駅行バス約20分 など
参加費
1000円
ご注意
★食品や薬品などの営業行為、宗教の勧誘をされる方の参加は、お断わりします
★講演終了後、交流のため、近くの店で二次会を開く予定です。よかったらご参加ください。
予備知識

* 予備知識 「リンパ浮腫」 について *

★リンパ浮腫は、決して珍しい病気ではなく、一次性(生まれつきのもの)、二次性(乳がん、子宮がん、前立腺がんなどの手術でリンパ節廓清を行なった後に起きるもの)など、結構多く見られます。しかし、まだ、この疾患自体があまり知られておらず、専門医も少なく、診断までに時間がかかり、こじらせてしまうことが少なくありません。

★リンパ浮腫の特徴は、皮膚の色の変化のない、無痛性のむくみです。最初は、軽く腫脹しても、朝には軽減します。むくみを繰り返すうち、皮膚が青白く冷たくなり、押せばひっこんでいた皮膚表面は、蛋白や脂肪が沈着して次第に硬くなります。悪化すると、太く変形するため「象皮症」とも呼ばれています。

★急速にむくみが進行した場合、圧迫感を覚えたり、静脈うっ血による皮膚の青紫化などが起こることがあります。まれにそけい部などのリンパ節腫脹を伴うことがあります。

★子宮がんや卵巣がんの手術で、両側のリンパ節を廓清しても、ほとんどの場合、太くなるのは片側だけです。もう一方の脚が以前より細くなり、左右差が大きくなることがよくあります。月経や暑さ、寒さで悪化することがあります。

★術後のむくみ予防には、日常生活の上で腕や脚をあげたり、マッサージ(特に入浴後が効果的)を心がけることが有効です。軽く皮膚表面をさするだけでも、術後、発達しはじめるリンパ管のバイパス(副行路)の流れを良くします。逆に身体をしめつける下着や衣類の着用や、長時間の立ち仕事、手足を振りまわすスポーツ、正座は基本的に望ましくありません。

★治療は、むくんだ腕や脚をあげ、マッサージでリンパ液の流れを良くし、弾力ストッキングやスリーブでそれを維持します。軽いリズミカルな運動や、水圧がかかる入浴中やプールで身体を動かすこともお薦めです。肥満はリンパ浮腫の大敵、減量を心がけます。

★皮膚が赤くなったり、熱をもつ場合、細菌感染による「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」の合併が考えられます。マッサージは炎症を悪化させるので中止。腕や脚をあげて安静にし、患部を冷やし、医師に相談し、早めに抗生物質を服用すると比較的短期間で治ります。

★「蜂窩織炎」の予防には、細菌を体内に入れないよう、虫刺され、土いじりに注意。 (乳がんの人は)手袋、長袖のシャツ、(子宮がんなどの人は)長ズボンを着用して、傷を防ぎます。特に爪周囲の清潔に心がけ、水虫は治療し、過労しないことも大切です。

*参考資料:『「リンパ浮腫」知って!』

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